パリの焼き栗

秋

寒くなってくるとパリでは焼き栗が売られる。
路上で、ドラム缶に鍋を置いて、薪を焚いて栗を焼く。
日本の天津甘栗のような味付けがされていないので、本当に栗の味しかしない。

冬のパリで手がかじかむと、カイロの代わりにこの焼き栗を買いたくなるんです。
紙袋にざらざらと焼き栗を入れてくれて、その紙袋をコートのポケットにいれるとカイロになる。
ポケットから栗をひとつずつ取り出しては皮を剥いて口に放り込む。
栗は予めナイフで切れ目を入れておいてくれるから簡単に剥けるんです。

ドラム缶でジャラジャラと焼いている栗だから、煤だらけで、たちまち手が真っ黒になる。
ついでにいえば、唇も真っ黒になる。
寒いパリで温まるにはそんな焼き栗と、キャフェのテラス。

キャフェのテラスにはルンペンストーブが置かれ、熱気が逃げないように透明のシートが下ろされ、ちょっとしたテントのようになっている。
夜になると、丸テーブルにはキャンドルが灯され、ストーブに温められながらキリリと冷えた白ワインを飲む。

ポケットから焼き栗を出しては口に運び、白ワインを流し込む。
ついでに黒くなった唇も白ワインで洗ってしまう。
そんなパリでの時間がちょっぴり懐かしい。

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